西には城山の下を流れる佐喜浜川の源流の彼方に四国の深い山々が青く霞んで見えた。東には南北に延びる海岸線と遍路道である海沿いの道が見えた。海は目が覚めるような青さで白い雲の彼方に遥か水平線が見えた。そして、その南北の曲りくねった美しい海岸線の彼方はこれまた青く霞んで見えるのだった。
南には城山のすぐ下を流れる佐喜浜川の水で潤う田圃が観音山まで広がっていた。そしてその田圃の真ん中に小さな社があって大きな杉の木があった。夜には城山のすぐ川向うにある妙見山のフクロウが鳴き、深い西の山々から狼の遠吠えが良く聞こえた。
どれ程時間が経過しても何も変わらないと考える。その美しい自然の中で全てを見つめていた。人の心も変わらない。流れて行く時間の中で変化はどの様に訪れるのか?「待っているのだ。」もう今となっては、それが何であったのかも忘れてしまった。
高知県室戸市佐喜浜町に城山と言われる小高い山がある。戦国時代にはその山の頂にお城があったらしい。しかし、当時の長宗我部氏に攻められて焼き討ちにあった。中に居た女官達は城から飛び降りて自害したと言う。今でも山には割れた茶碗とかがあるらしく、近寄ると祟りがあるとかの噂もあるのだ。
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